歯の知識
KNOWLEDGE
歯の基本知識
成人の歯は通常「親知らず」という第3大臼歯4本を加えた32本になりますが、最近では生えない人も多いようです。これらの歯は、「切歯」「犬歯」「臼歯」の3種類。また、歯肉から上に見える部分を「歯冠」、歯肉に隠れている部分を「歯根」といいます。
歯は、「エナメル質」「象牙質」「セメント質」から成り立っています。エナメル質はからだの中でもいちばん硬い組織で、硬さは水晶に近い硬度です。また、歯の中心部には、神経や血管が入り込んだ「歯髄」という大切な組織があります。
歯が健康なら固いものもよくかんで食べれるので、胃や腸に負担をかけずに全身に栄養をいきわたらせることができ、歯ざわりや歯ごたえを楽しみながらおいしく食べることができます。また、歯がちゃんとそろっていれば、はっきりと発音でき、美しい表情をつくるなど、歯は健康的な生活をする上で欠かせない存在なのです。
歯を失ってしまうとどうなる?
1本でも失うと、正常な働きができません。例えば、大臼歯(奥歯)が1本なくなっただけで、ものをかみくだく能率は約40%も低下するといわれています。そうなると、消化器官に負担がかかり、栄養の吸収が悪くなります。また、発音しにくくなって、言葉が不明瞭になったり、顔の輪郭が変わって、表情が老けて見えたりと、美容にも影響を及ぼします。悪いところは治療し、大切な歯を守る正しいケアを心がけてください。
歯垢と歯石について
歯垢
歯の表面や歯と歯の間、歯と歯肉のさかいめなどに付いている白いものが「歯垢」です。歯垢は、口の中で繁殖した細菌が、水にとけにくいネバネバした物質とともに、歯に付着してできた汚れで、細菌のかたまり(バイオフィルム)。
1gの1000分の1の歯垢に、1億個以上もの細菌が生息しています。歯垢は、ネバネバした物質と一緒に、歯に強固に付着しているため、口をゆすぐだけでは取り除けません。ハブラシを使って、ていねいに磨くことが必要です。歯垢が落としきれず、蓄積すると、口臭や虫歯、歯周病などの原因となってしまいます。
歯石
歯石は、歯垢がだ液中のカルシウムやリンと結びついて石灰化したものです。歯石の表面はザラザラしているので、その上にさらに歯垢がつきやすくなります。歯石は歯垢とちがって歯を磨くだけでは落とせません。
歯垢のうちに確実に落とすことが大切です。もし歯石が付いてしまったら、早めに歯科医院へ行って取り除いてください。見逃さないためにも、日頃から定期検診を受けて、歯石をチェックすることをおすすめします。
歯の病気について
心身の健康と密接にかかわっている歯
ここでは、いつまでも健康な歯を維持するために、歯の病気の原因と予防法について解説します。
虫歯
磨き残しがあると、お口の中に細菌の塊であるプラーク(歯垢)が出来上がります。細菌は食べかすなどを餌に酸を排出するので、徐々に歯が溶けていきます。これが虫歯のメカニズムです。少し歯が溶けた状態(脱灰)ならば、唾液の再石灰化作用により元の健康な歯質に戻る可能性があります。しかし、脱灰の進行スピードが再石灰化作用を上回ると、エナメル質に穴が開きます。
象牙質知覚過敏症
虫歯ではないのに、冷たい水がしみることがあります。歯周病や力を入れた歯みがきによって、歯肉が下がり、歯根の部分が出てしまうと、冷たいものや熱いものを食べたときや、歯ブラシを当てたときなどに、一過性の痛みを生じることがあるのです。
これを「象牙質知覚過敏症」といいます。虫歯とちがうのは、何もしないのに痛むことはありません。一時的に知覚過敏になっても、治ることがあります。しかし、歯みがき圧が強すぎる場合などでは、歯肉の退縮や歯の磨耗が進んで、悪化することもあります。症状がつづくようでしたら、ご相談ください。
歯周病
10~20代前半で、すでに60%の人がかかっていると言われます。歯周病(歯槽膿漏)には大きく分けて歯肉炎と歯周炎があります。歯周病はプラーク(歯垢)の中にいる歯周病原菌が歯と歯ぐきの間から歯肉に入り、歯を支える組織に炎症を起こすことが原因で生じる病気です。最後には歯が抜けてしまうこともあります。根絶的な治療法はありませんが、早期なら治療が可能です。歯周病にならないために最も大切なことは毎食後、丁寧に歯磨きを行うことです。
唾液のはたらき
あまり知られていない唾液の意外なパワー
- 虫歯を防ぐ
- 苦い物などの味を次第に薄くする
- 新しく生えた歯の表面(エナメル質、象牙質)を硬くする
- 酸度やアルカリ度を一定に保つ
- 殺菌、抗菌作用があり、発ガン性物質を抑制
- 粘膜を保護する
- 歯や骨を丈夫にする
- バイ菌や余分なものを排泄する
- 食べ物のおいしさがわかる
- 体の中の水分量を調整する
- ご飯、パン等を消化(デンプン分解)
- 入れ歯を安定させる、口の中を洗い流してきれいにする
- 口の中が湿ることで、かむ力や飲み込む力が出る、発音しやすくする
唾液の分泌をさせるためには?
大人は一口30~50回噛んで15分くらいは食事に時間をかけてゆっくり食べましょう。
子どもはやわらかい物ばかりではなく、歯ごたえのあるものを食べましょう。
よく噛んでダイエット!
食欲は、脳の摂食中枢より出される「食べなさい」という指令と、満腹中枢より出される「もうお腹いっぱい」という指令でコントロールされています。満腹感は、この満腹中枢からの指令がもたらします。
満腹中枢は、血液中の血糖値が上がることによって刺激され、反応するのですが、「食べるのはやめなさい」と指令を出すまで、食事を開始してから約15分から30分かかります。そのため、良く噛まずに早食いすると、満腹中枢が刺激されるまえに必要以上に食べてしまい、カロリーオーバーに。良く噛んで、ゆっくり食事することが大切です。
活動するための主なエネルギー源はブドウ糖です。このブドウ糖をエネルギーに変えるためにはインスリンというホルモンが必要になります。インスリンは噛む刺激をきっかけに膵臓から分泌されます。だから良く噛んで食事すると、食事をしている間にインスリンがどんどん作られ、食べ終わった直後から、エネルギーが急激に消費されていくのです。